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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「そんなの…帰ってきたらいくらでも作ってあげるよ」
少し罪悪感を感じるのは…染布の家政婦を引き受けたからだろうか。
…もちろん、亮一にはまだ話してはいない。
話したら間違いなく反対されるからだ。
…でも…
黙っているのはさすがに気が引ける…。
「…あのね、亮ちゃん。
私ね、アルバイトしようと思うの」
「へえ?どんなアルバイト?」
「…あの…。
…が、学生寮の…調理…。
寮母さんみたいなお仕事。
張り紙で見つけたの」
…ちょっとだけ…いや、かなりな嘘を混ぜる…。
「へえ…。
あ、もしかしてセシリア女子大の寮?
ウチからすぐ近くだもんな。
いいんじゃない?
あそこ超お嬢様学校だから敷地内男子禁制なんだよな。
あの学生寮なら安心だ」
「…う、うん。
そう…」
「スミちゃん料理上手いから、学生たち喜ぶよ。
無理しない程度にやったらいいんじゃない?
火傷とか気をつけてね。
包丁で指を切らないように。
スミちゃんそそっかしいから」
…亮一の早合点に小さく笑って頷く。
「うん。気をつける。
ありがとう」
家政婦と寮母は似たようなものだ。
…ちょっと良心は痛むが、全部嘘ではない。
と、自分に言い聞かせる。
…実はさ…
やや済まなそうに亮一が頭を掻く。
「…出張、もう少し長引きそうなんだよな。
現地スタッフが一人早めの育休に入っちゃってさ。
日本語と英語話せて営業出来るの、俺くらいだから…て、支店長に拝み倒されてさ」
反射的にほっとする自分が後ろめたくて、菫は敢えて明るく答える。
「いいんじゃない?
亮ちゃんがアメリカで必要とされてるの、凄いことだよ。
今の仕事も、これからの亮ちゃんにきっとプラスになるだろうし…」
…ごめんね、亮ちゃん。
心の中で、そっと詫びる。
「私は大丈夫だから、心配しないでね」
…もう少しだけ…夢を見させて…。
…もう少しだけ…きっとすぐ終わる…。
…夢のような、片恋だから…。
少し罪悪感を感じるのは…染布の家政婦を引き受けたからだろうか。
…もちろん、亮一にはまだ話してはいない。
話したら間違いなく反対されるからだ。
…でも…
黙っているのはさすがに気が引ける…。
「…あのね、亮ちゃん。
私ね、アルバイトしようと思うの」
「へえ?どんなアルバイト?」
「…あの…。
…が、学生寮の…調理…。
寮母さんみたいなお仕事。
張り紙で見つけたの」
…ちょっとだけ…いや、かなりな嘘を混ぜる…。
「へえ…。
あ、もしかしてセシリア女子大の寮?
ウチからすぐ近くだもんな。
いいんじゃない?
あそこ超お嬢様学校だから敷地内男子禁制なんだよな。
あの学生寮なら安心だ」
「…う、うん。
そう…」
「スミちゃん料理上手いから、学生たち喜ぶよ。
無理しない程度にやったらいいんじゃない?
火傷とか気をつけてね。
包丁で指を切らないように。
スミちゃんそそっかしいから」
…亮一の早合点に小さく笑って頷く。
「うん。気をつける。
ありがとう」
家政婦と寮母は似たようなものだ。
…ちょっと良心は痛むが、全部嘘ではない。
と、自分に言い聞かせる。
…実はさ…
やや済まなそうに亮一が頭を掻く。
「…出張、もう少し長引きそうなんだよな。
現地スタッフが一人早めの育休に入っちゃってさ。
日本語と英語話せて営業出来るの、俺くらいだから…て、支店長に拝み倒されてさ」
反射的にほっとする自分が後ろめたくて、菫は敢えて明るく答える。
「いいんじゃない?
亮ちゃんがアメリカで必要とされてるの、凄いことだよ。
今の仕事も、これからの亮ちゃんにきっとプラスになるだろうし…」
…ごめんね、亮ちゃん。
心の中で、そっと詫びる。
「私は大丈夫だから、心配しないでね」
…もう少しだけ…夢を見させて…。
…もう少しだけ…きっとすぐ終わる…。
…夢のような、片恋だから…。