この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「先生、今夜は何が食べたいですか?」
ピアノのレッスンが終わると、菫はすぐにエプロンを着ける。
キッチンは綺村家のを使うよう、尊文に言われた。
食材などはネットで注文すると宅配業者が翌日配達してくれる。
ネットにないものは直接スーパーなどで買って良いと買い物専用のカードを渡されていた。
…随分信用されているんだな…。
菫は思った。
…隣に住んでるし、店子だしね。
「兄さんがミレイも一緒にご飯食べていいって。
だから、食べていって。
…兄さんがそんなこと言うの、珍しいんだよ。
ミレイのこと、気に入ってるんだね」
染布は無邪気にウィンクしてみせた。
「…気に入っているなんて…」
そんなふうには到底思えない冷淡さだったけど。
尊文の端正だが冷ややかな面差しを思い浮かべる。
そして…
…『染布をなるべくひとりにしないでください。
弟は失恋したばかりなのです』
尊文の言葉を思い出す。
…要は、家政婦兼監視役…てとこかしらね…。
いいけど、別に…。
雇い主からお墨付きをもらったわけだし。
染布の側に居られるなら…
このどこか謎めいた稀有に美しい青年と一緒に居られるなら…
「…じゃあ、今日は豆もやしご飯と参鶏湯がいいな。
あと、エゴマの葉の天ぷら。
いい?」
飛び切りの笑顔で答える青年に、菫は相変わらずどきどきしながら頷いた。
「ええ、もちろん」
そして、やはり気になってしまうのだ。
…失恋…。
どんなひとなんだろう…。
染布先生が恋したひと…て…。
ピアノのレッスンが終わると、菫はすぐにエプロンを着ける。
キッチンは綺村家のを使うよう、尊文に言われた。
食材などはネットで注文すると宅配業者が翌日配達してくれる。
ネットにないものは直接スーパーなどで買って良いと買い物専用のカードを渡されていた。
…随分信用されているんだな…。
菫は思った。
…隣に住んでるし、店子だしね。
「兄さんがミレイも一緒にご飯食べていいって。
だから、食べていって。
…兄さんがそんなこと言うの、珍しいんだよ。
ミレイのこと、気に入ってるんだね」
染布は無邪気にウィンクしてみせた。
「…気に入っているなんて…」
そんなふうには到底思えない冷淡さだったけど。
尊文の端正だが冷ややかな面差しを思い浮かべる。
そして…
…『染布をなるべくひとりにしないでください。
弟は失恋したばかりなのです』
尊文の言葉を思い出す。
…要は、家政婦兼監視役…てとこかしらね…。
いいけど、別に…。
雇い主からお墨付きをもらったわけだし。
染布の側に居られるなら…
このどこか謎めいた稀有に美しい青年と一緒に居られるなら…
「…じゃあ、今日は豆もやしご飯と参鶏湯がいいな。
あと、エゴマの葉の天ぷら。
いい?」
飛び切りの笑顔で答える青年に、菫は相変わらずどきどきしながら頷いた。
「ええ、もちろん」
そして、やはり気になってしまうのだ。
…失恋…。
どんなひとなんだろう…。
染布先生が恋したひと…て…。