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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密

「染布とは上手くやっていけているようですね」
…昼過ぎの駅前のスターバックスコーヒー。
席は八割方埋まっている。
雑多な喧騒をものともせずにゆったりと菫が居る窓際の席に優雅に座るなり、尊文は告げた。
…隣りの席の女子大生らしき二人組が目配せしながら眩しげに尊文を盗み見ている…。
明るい陽光の中、男の彫像のような美貌は気高く煌めくように輝いている。
…このひと、本当に綺麗な貌をしているわ…。
改めて感心する。
染布先生とはまた違うカテゴリーな美形だけれど…。
「何ですか?」
菫の視線を受け、リムレスの眼鏡の奥の切れ長の瞳が訝しげに眇められる。
「…あ…い、いいえ…。
失礼しました」
慌てて目を逸らす。
…うっとりするくらいに綺麗だけど、ちょっと感じが悪いのよね…。
密かに毒吐く。
「染布が、貴女の話をよくします。
食事が美味しいし、優しいし、話していてとても楽しいと…。
以前より、笑顔が多く見られるようになりました。
貴女に来てもらって本当に良かった」
そう言うと、柔らかく微笑んだ。
男が笑うとさながら、冬の冷たい雪が溶け出して、春の陽射しのような煌めきと温かさが広がるようだった。
その微笑みはあまりに優しくて、菫は一瞬どきりとした。
…こんな風にも笑えるひとなんだ…。
「…それは…良かったです…」
「ご主人がお帰りになってもぜひ食事を作りに来て欲しいです」
…尊文は形の良い凛々しい眉を少し顰め、咳払いし
「…これは主に染布の希望ですが」
と、言い訳のように付け加えた。
「…染布には、貴女が必要です」
ぽつりと呟いたその言葉には、微かな憂いが感じられた。
…昼過ぎの駅前のスターバックスコーヒー。
席は八割方埋まっている。
雑多な喧騒をものともせずにゆったりと菫が居る窓際の席に優雅に座るなり、尊文は告げた。
…隣りの席の女子大生らしき二人組が目配せしながら眩しげに尊文を盗み見ている…。
明るい陽光の中、男の彫像のような美貌は気高く煌めくように輝いている。
…このひと、本当に綺麗な貌をしているわ…。
改めて感心する。
染布先生とはまた違うカテゴリーな美形だけれど…。
「何ですか?」
菫の視線を受け、リムレスの眼鏡の奥の切れ長の瞳が訝しげに眇められる。
「…あ…い、いいえ…。
失礼しました」
慌てて目を逸らす。
…うっとりするくらいに綺麗だけど、ちょっと感じが悪いのよね…。
密かに毒吐く。
「染布が、貴女の話をよくします。
食事が美味しいし、優しいし、話していてとても楽しいと…。
以前より、笑顔が多く見られるようになりました。
貴女に来てもらって本当に良かった」
そう言うと、柔らかく微笑んだ。
男が笑うとさながら、冬の冷たい雪が溶け出して、春の陽射しのような煌めきと温かさが広がるようだった。
その微笑みはあまりに優しくて、菫は一瞬どきりとした。
…こんな風にも笑えるひとなんだ…。
「…それは…良かったです…」
「ご主人がお帰りになってもぜひ食事を作りに来て欲しいです」
…尊文は形の良い凛々しい眉を少し顰め、咳払いし
「…これは主に染布の希望ですが」
と、言い訳のように付け加えた。
「…染布には、貴女が必要です」
ぽつりと呟いたその言葉には、微かな憂いが感じられた。

