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溺れゆく調教の沼
第12章 犬になりたい
しばらくすると、飼い主にリードで引かれた犬が来た。
「あら、ミリーちゃん、ここにおもちゃがあるわよ。遊んでもいいわよ。」
そう言われてその犬はとてもはしゃいだ様子で美稀にまとわりついてきた。顔をなめたり、下半身をこすりつけてきたり、とにかく喜んで遊んだ。
美稀は力の限りに叫んだが唸り声にしかなっていない。
「もう気が済んだ?さあ、行きましょう。」
その犬も行ってしまった。
美稀は涙でグチョグチョの顔になっていた。もっとも顔はマスクに覆われて誰にも見えないのだが。
ご主人様どころか、犬にも相手にしてもらえない。本当に最下層だということを思い知らされる。犬ほどの自由もない。四つん這いで歩ける犬を心から羨ましく思っていた。
いったい何匹の犬の屈辱を受けたのか、どのくらい時間が経ったのか、何も考えられなくなったところで女性が帰って来た。
「あらあら、顔も体も汚いわねぇ。」
しゃがんで顔を覗き込んでから
「犬様が羨ましいでしょう?早く犬になりたいわよね?」
そう言って四つん這いに戻し、リードを引いた。少し歩いたところで四角い箱に入るように言われた。入ると、四方から水が出てきた。水が止まると、反対側の出口から出られるようになっていた。
「少しはきれいになったわね。」と言われて先ほどの場所の近くに連れていかれた。今度は、水飲み場の隣だった。
そしてまた同じように仰向けにされて、今度は両手の間のバーも壁のリングと繋がれた。これで、手も足も自由は無い。四つん這いを裏返しにしたような格好でいるしかないのだ。
「奇麗にしたし、バターを塗ってあげるわね。」
バター?
「犬様たちの大好物なのよ。ほら、オッパイにもココにもたっぷり塗ってあげるわよ。
美稀は思った。水飲み場の横、つまり犬にとっておやつの場所なのだ。
「ここで犬様に好かれなさい。やがて犬様の匂いが染みついたら仲間意識を持ってくれるわよ。嫌われたら終わりだけどね。」
そう言うと、また女性は忙しいと言って去ってしまった。
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