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人見知り巨乳女子とロールキャベツ系整体師の恋
第5章 おとなしいあの子



彼女は、大樹が2年間だけ通った大学の、同学年であった。
学部は異なるが、大樹の友人の彼女のさらに友人として、一度だけ同じ飲み会に参加したことがある。

十数名が対面して並ぶ席の一番端で、緊張しているような、少し困っているような表情で周りの話に相槌を打っている姿が気になり、声をかけるタイミングを見計らっていたが、当時付き合ったばかりの本間朱音も同席していたため、自分から真野綾子に話しかけることはなかった。

当時と比べると、服装だけ社会人らしく変化しているが、その他は変わっていない。


「あ…だい……です」
真野綾子と見られる女性が口を開いた。

緊張しているのか、かすれたような、くぐもった声で答えるため、よく聞き取れなかった。

「……大丈夫です?」
真野綾子本人かどうかの確認ついでに、少しだけ顔を覗き込んだ。。
仕事終わりにしては化粧っ気のない顔だったが、きめ細かく白い肌質の上に、控えめだがそれぞれ形の良い目鼻と唇が、バランスよく配置されている気がする。

「はいっ」
女性は今度ははっきり答えたが、半歩後ずさりした。

びっくりさせていたら申し訳なかったなと思いつつ、カルテを記入するよう案内する。

受付台の上で丁寧に記述する彼女の黒髪が、室内灯に艷やかに照らされている。



カルテには思った通り、
「真野 綾子 22歳」と書いてあった。
その下の住所欄をついつい凝視してしまう。

彼女に視線を戻すと、気まずそうとも言える表情でこちらを見ているが、過去に一度会ったことのある相手だと、はたして気が付いているのだろうか。


「じゃあ、30分整体コースでご案内しますね」

どちらにしても、こちらは気付いていない体を貫くことに決め、施術室へと案内する。

慌てた様子でスリッパを履き替え、小走りで後をついてくる彼女の姿は、やはり大樹の庇護欲を誘うのだった。
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