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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第8章 叔父
「難しいよ。美里には、年一回、癌検診を受けさせていたのに、見つかった時は、ステージが進んでいた。若いと癌細胞も活発だからな。こんなことになるのなら、半年に一度にすべきだったかもしれない」
と、嘆く叔父の声。
「癌検診って高いの?」
と、訊く母。
「これくらいだ」
と、話す叔父の声。
「そ、そんなに!」
と、驚く母の声。
「ところで、住み込みの件はどうでした?」
と、訊く叔父の声。私もその結果は知りたい。
「パート先はダメだったわ。住み込みの寮が独身男性専用らしくて」
と、話す母の声。それは聞いたから、続きが気になった私。
「で、前に勤めていた会社に連絡したら、経験者募集をしているし、家賃補助が5万くらいなら出るというので、話を聞きに行っていたから、遅くなって」
と、話す母に、
「そんなことは気にしなくていいさ。単に寝ていただけだから」
と、話す叔父。
「そこは、OKは出たのだけど、募集があるのは、福岡なのよ」
と、話す母。福岡って遠い。静岡か福島ならまだしも・・・。
「それじゃ、とても無理だ。家賃5万くらいなら、俺が何とかするが」
と、話す叔父。
「そんなわけにはいかないわ。夫も亡くなって、宗次さんだって、美里さんが亡くなって、親戚と言ったって、私も宗次さんも桃宮の血は継いでいないし。私と宗次さんを結んでいた線は消えたようなもの」
と、話す母。
「そうだな。血を継いでいるのは茉莉だけか」
と、話す叔父。
「そう。夫から生前に言われたわ。『なんとしても、茉莉を育て上げて、結婚させて、男子を生ませて、世継ぎを得て家名を存続させてくれ』って。育て上げるだけでも大変なのに、結婚させて、男子を生ませるなんて、特に男子を生ませるは神頼みの世界だから。それに、結婚させるといっても、自分がいなくなれば、母子家庭になって、結婚には不利になるのに」
と、苦笑する感じの母。
「そうだな」
と、頷く感じの叔父。
「でも、宗次さんは、落ち着いたら次があるわ。美里さんには悪いけど、まだ40歳にもなっていないし、係累もいないのだから、再婚できるわ」
と、話す母。
「無理だよ。俺の頭の中には美里が棲みついているから」
と、最後の方は掠れるような声で話す叔父。というより、無神経なことを言った母が疎ましたった私。
と、嘆く叔父の声。
「癌検診って高いの?」
と、訊く母。
「これくらいだ」
と、話す叔父の声。
「そ、そんなに!」
と、驚く母の声。
「ところで、住み込みの件はどうでした?」
と、訊く叔父の声。私もその結果は知りたい。
「パート先はダメだったわ。住み込みの寮が独身男性専用らしくて」
と、話す母の声。それは聞いたから、続きが気になった私。
「で、前に勤めていた会社に連絡したら、経験者募集をしているし、家賃補助が5万くらいなら出るというので、話を聞きに行っていたから、遅くなって」
と、話す母に、
「そんなことは気にしなくていいさ。単に寝ていただけだから」
と、話す叔父。
「そこは、OKは出たのだけど、募集があるのは、福岡なのよ」
と、話す母。福岡って遠い。静岡か福島ならまだしも・・・。
「それじゃ、とても無理だ。家賃5万くらいなら、俺が何とかするが」
と、話す叔父。
「そんなわけにはいかないわ。夫も亡くなって、宗次さんだって、美里さんが亡くなって、親戚と言ったって、私も宗次さんも桃宮の血は継いでいないし。私と宗次さんを結んでいた線は消えたようなもの」
と、話す母。
「そうだな。血を継いでいるのは茉莉だけか」
と、話す叔父。
「そう。夫から生前に言われたわ。『なんとしても、茉莉を育て上げて、結婚させて、男子を生ませて、世継ぎを得て家名を存続させてくれ』って。育て上げるだけでも大変なのに、結婚させて、男子を生ませるなんて、特に男子を生ませるは神頼みの世界だから。それに、結婚させるといっても、自分がいなくなれば、母子家庭になって、結婚には不利になるのに」
と、苦笑する感じの母。
「そうだな」
と、頷く感じの叔父。
「でも、宗次さんは、落ち着いたら次があるわ。美里さんには悪いけど、まだ40歳にもなっていないし、係累もいないのだから、再婚できるわ」
と、話す母。
「無理だよ。俺の頭の中には美里が棲みついているから」
と、最後の方は掠れるような声で話す叔父。というより、無神経なことを言った母が疎ましたった私。