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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第8章 叔父
寝ている叔父の横で、私が思い出したのは、叔父が、叔母や父や母のいるところで、
「できることなら、もう1人。できれば、男子が欲しい」
と、言って、父にたしなめられていたときのこと。叔父の志位という苗字がどれほどの家かは知らないけれど、開業医でもあり、事業継承や家名存続という意味でも男の子が欲しかったということは、私も高校生になっていたので、わかりました。
日本史の授業で、「家名断絶・改易」という言葉を習うと、家名存続ということが重要だなのだと思いました。あくまでも、家長制度のなかでの話なのでしょうけど。叔父は、
「地域医療を存続させる意味でも跡継ぎが」
と、言っていました、かかりつけ医制度の話も絡んで、内科医院は、重要だということを叔父は熱く語っていた時期もありました。
そんななか、携帯電話が鳴りました。叔父を起こさないように慌てて、電話に出た私。電話をしてきたのは母でした。
「ダメだったわ。住み込みで働いているのは独身の男の人ばかりだから、そんなところに私たちが住み込みさせるわけにはいかないって」
と、落胆する母。
「以前、働いていた会社に連絡したら、正社員採用なら家賃補助で5万円まで出るらしいの。少し遠いけど、行くから、宗次さんの相手を頼むわ。もし、帰るって言ったら、飲酒しているから代行を呼んで」
と、言って電話を切った母。今から、以前の会社まで行って話をしたら帰宅は何時になるの?という感じでした。
叔父の宗次は、寝てしまい、爆睡中。私もなんとなく疲れて、叔父が寝ている畳の部屋の北側の縁側の板の上で、座布団を枕にして寝ました。叔父が起きて帰るなら、寝ている私を起こすだろうし、叔父が寝ている間に母が帰ってくれば、母が対応するだろうと思っていたのです。
日が沈む午後7時過ぎ。話し声で目が覚めました。
「茉莉に彼氏ができるかしら」
と、話すのは母。
「できるだろ。さっきも思ったが、美里にそっくりだよ。生き写しってこういうことなんだと思ったよ」
と、話す叔父。
「美里さんに、確かに似ているわね。私には全く似ていないから。だから、余計に怖いのよ。夫や美里さんに似ているということは、桃宮の血が濃いということでしょう。癌家系の血が濃いというのは、不安。茉莉には長生きしてほしいから。せめて私よりは長生きしてくれないと」
と、話す母の声。
「できることなら、もう1人。できれば、男子が欲しい」
と、言って、父にたしなめられていたときのこと。叔父の志位という苗字がどれほどの家かは知らないけれど、開業医でもあり、事業継承や家名存続という意味でも男の子が欲しかったということは、私も高校生になっていたので、わかりました。
日本史の授業で、「家名断絶・改易」という言葉を習うと、家名存続ということが重要だなのだと思いました。あくまでも、家長制度のなかでの話なのでしょうけど。叔父は、
「地域医療を存続させる意味でも跡継ぎが」
と、言っていました、かかりつけ医制度の話も絡んで、内科医院は、重要だということを叔父は熱く語っていた時期もありました。
そんななか、携帯電話が鳴りました。叔父を起こさないように慌てて、電話に出た私。電話をしてきたのは母でした。
「ダメだったわ。住み込みで働いているのは独身の男の人ばかりだから、そんなところに私たちが住み込みさせるわけにはいかないって」
と、落胆する母。
「以前、働いていた会社に連絡したら、正社員採用なら家賃補助で5万円まで出るらしいの。少し遠いけど、行くから、宗次さんの相手を頼むわ。もし、帰るって言ったら、飲酒しているから代行を呼んで」
と、言って電話を切った母。今から、以前の会社まで行って話をしたら帰宅は何時になるの?という感じでした。
叔父の宗次は、寝てしまい、爆睡中。私もなんとなく疲れて、叔父が寝ている畳の部屋の北側の縁側の板の上で、座布団を枕にして寝ました。叔父が起きて帰るなら、寝ている私を起こすだろうし、叔父が寝ている間に母が帰ってくれば、母が対応するだろうと思っていたのです。
日が沈む午後7時過ぎ。話し声で目が覚めました。
「茉莉に彼氏ができるかしら」
と、話すのは母。
「できるだろ。さっきも思ったが、美里にそっくりだよ。生き写しってこういうことなんだと思ったよ」
と、話す叔父。
「美里さんに、確かに似ているわね。私には全く似ていないから。だから、余計に怖いのよ。夫や美里さんに似ているということは、桃宮の血が濃いということでしょう。癌家系の血が濃いというのは、不安。茉莉には長生きしてほしいから。せめて私よりは長生きしてくれないと」
と、話す母の声。