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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第8章 叔父
「そう。美里さんは幸せね。いつまでも想ってもらえるのだから」
と、話す母の声。
「と言っても、生きていればだ。想いは募るばかりだけど、何をしてやれるわけではない。もっと、生きている間にしてやればよかったと後悔するばかりだ」
と、嘆く叔父の声。
「茉莉が美里さんに似ているのだったら、宗次さんみたいに、大事にしてくれる人に出会えるかもしれないわね」
と、話す母の声。
「そうなるかもしれない。でも、俺は嫉妬しそうだよ。その男に」
と、自嘲する感じの叔父の笑い声。
「父親が娘の夫に嫉妬するとは聞くけど、叔父が姪の結婚相手に嫉妬するのは珍しいかもしれないわ」
と、母の笑う声。フッと母の笑う声が止まり、
「宗次さん、茉莉のことが好きなの?美里さんに似ているから?」
と、訊く母の声。
「茉莉ちゃんは姪だよ」
と、笑う叔父の声。そう、姪なのよ。しっかりしてよお母さん。何を言い出すの!と思った私だけど、
「叔父と姪と言ったって、さっきの話じゃないけど、血縁はないし、縁を結んでいた美里さんも克彦さんもいないのよ。宗次さんと茉莉次第だと思うわ」
と、話す母。え?と思った私。確かに血縁はないけど、親戚。
「言いたいことはわかるよ。血縁がない以上、結婚だってできるというのは。ただ、法的にという話だろ。倫理的には、無理だよ。それに、世間体というものがある。いくら、前妻の血縁で似ていると言ったって、そんなことをしているのは、アフリカの原住民ぐらいだ」
と、笑う叔父。
「そう」
と、少し落胆した感じの母の声。なぜ、落胆?と思った私。
「ただ、合理的かなって思ったのよ。茉莉にこの先、いつ結婚相手が見つかるのか、そして、いつ出産するのか、もしかしたら、結婚する前に癌に侵されてしまうかもしれないし、茉莉の結婚相手が見つからないかもしれないし、とか、考えたら、茉莉に似ている美里さんをそこまで愛してくれている宗次さんと一緒になる方がいいのかしらって思ったのよ」
と、説明する母。わからなくはないけれど、
「恵里ちゃんのときに感じたの。茉莉も長くないかもしれないって」
と、話す母の声。ここで叔父の亡くなった娘の恵里ちゃんの話を出す鈍感さ。まだ、亡くなって1年。このタイミングで話すバカさ加減に呆れた私。
と、話す母の声。
「と言っても、生きていればだ。想いは募るばかりだけど、何をしてやれるわけではない。もっと、生きている間にしてやればよかったと後悔するばかりだ」
と、嘆く叔父の声。
「茉莉が美里さんに似ているのだったら、宗次さんみたいに、大事にしてくれる人に出会えるかもしれないわね」
と、話す母の声。
「そうなるかもしれない。でも、俺は嫉妬しそうだよ。その男に」
と、自嘲する感じの叔父の笑い声。
「父親が娘の夫に嫉妬するとは聞くけど、叔父が姪の結婚相手に嫉妬するのは珍しいかもしれないわ」
と、母の笑う声。フッと母の笑う声が止まり、
「宗次さん、茉莉のことが好きなの?美里さんに似ているから?」
と、訊く母の声。
「茉莉ちゃんは姪だよ」
と、笑う叔父の声。そう、姪なのよ。しっかりしてよお母さん。何を言い出すの!と思った私だけど、
「叔父と姪と言ったって、さっきの話じゃないけど、血縁はないし、縁を結んでいた美里さんも克彦さんもいないのよ。宗次さんと茉莉次第だと思うわ」
と、話す母。え?と思った私。確かに血縁はないけど、親戚。
「言いたいことはわかるよ。血縁がない以上、結婚だってできるというのは。ただ、法的にという話だろ。倫理的には、無理だよ。それに、世間体というものがある。いくら、前妻の血縁で似ていると言ったって、そんなことをしているのは、アフリカの原住民ぐらいだ」
と、笑う叔父。
「そう」
と、少し落胆した感じの母の声。なぜ、落胆?と思った私。
「ただ、合理的かなって思ったのよ。茉莉にこの先、いつ結婚相手が見つかるのか、そして、いつ出産するのか、もしかしたら、結婚する前に癌に侵されてしまうかもしれないし、茉莉の結婚相手が見つからないかもしれないし、とか、考えたら、茉莉に似ている美里さんをそこまで愛してくれている宗次さんと一緒になる方がいいのかしらって思ったのよ」
と、説明する母。わからなくはないけれど、
「恵里ちゃんのときに感じたの。茉莉も長くないかもしれないって」
と、話す母の声。ここで叔父の亡くなった娘の恵里ちゃんの話を出す鈍感さ。まだ、亡くなって1年。このタイミングで話すバカさ加減に呆れた私。