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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第9章 死の恐怖
母が憑りつかれていたことは、私と同じ。それは、私が何歳まで生きられるのかという不安。

私も不安のどん底にあったし、母もそれが心配で仕方がなかった。

2年前に父が、1年前に従妹が、そして、この年に、叔母が、癌で亡くなった。3年連続で。

私の不安と、母の心配は、多分、誰にも理解できないと思う。こんな経験をした人がいるなら別だけど。

長生きしたのは祖父だけ。祖母も早くに亡くなっていた。その祖母の血を受け継いでいる父と2人の叔母、叔母の子である従妹が癌で亡くなり、その血を受け継いでいて、生きているのは私だけ。

この不安。というより、恐怖。わかる人はいるかしら。いないと思うわ。

高校3年生で、高校1年生で父を、高校2年生で従妹を、高校3年生で叔母を。クラスメートは、私に同情しながら、私を怖がっていた。死神に憑りつかれていると。

男子の中には、

「次はお前だ」

と、揶揄っているつもりで言っていたけど、言われている私は、死の恐怖しかないという状況だった。そう、揶揄って言っているつもりの

「次はお前だ」

という言葉が、私には死刑宣告に聞こえていた。そう、死神の死刑宣告。叔父に勧められて、癌検診を受けたのは、叔母と一緒に受けた去年。叔母はその時に大腸癌が見つかって、抗癌剤治療をしたが、効果が薄く、癌の進行を止められず、先々月に亡くなった。私は、見つからなかった。見つからなかったから安心できるものではない。見落としはさすがに減ったというけどゼロではないし、あくまでも、検診を受けた日の時点では、見つからなかったというだけ。もしかしたら、今日、癌細胞ができているかもしれない。その恐怖があった。

でも、学校では極力、明るく振舞っていた。真剣にその恐怖と向き合うのが怖かったから。でも、そんなことを知らないクラスメートは、私が大して気にしていないと思って、揶揄ってくる。そんな毎日だった。

母も、それは同じだったと思う。一人娘が、いつ癌に侵されるのか不安で仕方がなかったのだと思う。

だから、叔父に、

「茉莉に、女の幸せを知って欲しい。結婚、出産を経験させたい。子供が生まれれば、茉莉に何かあっても、まだ、その子がいる」

と、話していた。心配してくれる母も、私の死を確信している感じだった。
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