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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第10章 女の幸せ
「でもね。我に返ったよ。違うって」
と、母に伝える叔父。
「茉莉ちゃんは言ったよ。『叔父さん。私は美里叔母さんじゃないわ。茉莉よ』って」
と、話す叔父。真面目で素直な叔父。隠しておけばいいのに。
「そんなことが。でも、酔っていたとしても見間違えるほど似ているということね。そういえば、夫が生前、言っていたわ。『茉莉は美里の子供の頃に似ている』って」
と、話す母。父は私だけではなく、母にも同じようなことを話していたのだとわかった。それくらい似ていたのだと、私も思った。叔父が間違えるというか、酔っていたからか、抱きたくなったのも当然なのかもしれないと理解したわ。
「似ているのは、姿かたちだけじゃない。声も、匂いも、抱きしめたときの感触も」
と、思い出してながらなのか、ゆっくりと話す叔父。
「そうね。声は似ているかもしれないわ。声変わりしてから、そう思うようになったわ」
と、母も話していた。私も、それは感じていた。さすがに、匂いや、抱きしめたときの感触は、母も私もわからなかったけど。でも、叔父が言うなら、そうなのかもしれないと思ったわ。
そう、このとき、私は、思い出していた。さっき、キッチンで叔父に抱きしめられたときの感触。男の人に初めて抱きしめられた感触。学校で、女子同士でも抱きしめられることがあるけど、全然違う感覚だった。力の強さ。筋肉や骨が違うのか、腕の硬さが違った。
叔父は、筋肉質な人ではなかったから、筋肉質な男性だったら、どんなに強く抱きしめられるのかしら?とも、ふと思った。
というか、叔父に抱きしめられた感触が蘇ると、もう一度、抱きしめられたいという気持ちが湧いてくる不思議。あの抱きしめられた瞬間に、身体に沸き起こる安心感は何?というくらいにあった。思わず、このままがいいって思うくらい。だから、叔父が落ち着くのを待てた。そして、離れた瞬間の切ない感じ。
抱きしめられている間の、死の恐怖さえ、消し飛ばしてくれそうな安心感。
『好きな人に抱かれたい』と思ったけど、私にはそんな人はいなかった。
と、母に伝える叔父。
「茉莉ちゃんは言ったよ。『叔父さん。私は美里叔母さんじゃないわ。茉莉よ』って」
と、話す叔父。真面目で素直な叔父。隠しておけばいいのに。
「そんなことが。でも、酔っていたとしても見間違えるほど似ているということね。そういえば、夫が生前、言っていたわ。『茉莉は美里の子供の頃に似ている』って」
と、話す母。父は私だけではなく、母にも同じようなことを話していたのだとわかった。それくらい似ていたのだと、私も思った。叔父が間違えるというか、酔っていたからか、抱きたくなったのも当然なのかもしれないと理解したわ。
「似ているのは、姿かたちだけじゃない。声も、匂いも、抱きしめたときの感触も」
と、思い出してながらなのか、ゆっくりと話す叔父。
「そうね。声は似ているかもしれないわ。声変わりしてから、そう思うようになったわ」
と、母も話していた。私も、それは感じていた。さすがに、匂いや、抱きしめたときの感触は、母も私もわからなかったけど。でも、叔父が言うなら、そうなのかもしれないと思ったわ。
そう、このとき、私は、思い出していた。さっき、キッチンで叔父に抱きしめられたときの感触。男の人に初めて抱きしめられた感触。学校で、女子同士でも抱きしめられることがあるけど、全然違う感覚だった。力の強さ。筋肉や骨が違うのか、腕の硬さが違った。
叔父は、筋肉質な人ではなかったから、筋肉質な男性だったら、どんなに強く抱きしめられるのかしら?とも、ふと思った。
というか、叔父に抱きしめられた感触が蘇ると、もう一度、抱きしめられたいという気持ちが湧いてくる不思議。あの抱きしめられた瞬間に、身体に沸き起こる安心感は何?というくらいにあった。思わず、このままがいいって思うくらい。だから、叔父が落ち着くのを待てた。そして、離れた瞬間の切ない感じ。
抱きしめられている間の、死の恐怖さえ、消し飛ばしてくれそうな安心感。
『好きな人に抱かれたい』と思ったけど、私にはそんな人はいなかった。