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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第11章 叔父と?
「お母さんが言うみたいに、確かに、彼氏ができるとは思わないわ。今の学校では、特に。お父さんが亡くなって、叔母さんが亡くなって、忌引きが続いたから、みんな、私を怖がっているわ。それに、『次はお前だ』とか、脅かす男子もいるから。とてもではないけど、そんな人はお断り」

と、話して一息ついて、母が何か言いかけるのを、手で制止して、

「それに、好きな人ができたとして、そして、縁があったとして、もし、子供を授かったとしても、私が癌になったら、そして、死んだら、その人が叔父さんみたいに嘆き悲しむのなら、
結婚もしたくないし、子供を残して、心残りのまま死ぬくらいなら、産みたくはない」

と、私は自分の考えを伝えたわ。黙って頷く叔父。母が、

「そうね。それはわかるわ。ただ、万が一、茉莉の身に何かあったとしても、茉莉が生んだ子は、私が育てるわ。まだ、40歳前だから、茉莉が生んだ子が20歳になるまで、生きられるはずだから」

と、話した。

「いいわね。癌家系でない人は」

と、私は母を睨んだ。母は、いつも、こんな感じ。親子でも言っていい話と悪い話の区別がつかない。でも、本音なのだとは思った。確かに、私が死んで、子供が残された場合、母に任せるしかないのは事実。

「じゃあ、任せるわ。私が癌で死んだら、私の残した子供を成人するまで世話してね」

と、私は言ってやった。実際、それしか方法はないのだから。私が子供を産むとしたら。

私は考えた。もし、彼氏ができて結婚したとしても、私が死んだら、その人は、叔父さんみたいに嘆き悲しむだろう。愛情があれば、当然そうなる。

だとすれば、愛情がない人の方がいいのかもしれない。それとも、愛情があっても、嘆き悲しみがマシな方がいいのかもしれない。

だとすれば、叔父はある程度、その範囲に収まる人なのではないかと思った。叔父が好きなのは、私ではなく、私に似ていた妻である美里さん。今、嘆き悲しんでいるのも美里さんのこと。もし、私と一定期間だとしても一緒に過ごせば、その嘆き、悲しみは緩和できるかもしれない。そして、私に何かあっても、元に戻るだけ。

そして、何より、私には叔父に対して、この数時間を経て、微かに情が移ってきている自覚があった。

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