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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第12章 初体験
「クリームは取れましたよ」

と、微笑む叔父。エレベーターの扉が開いた。最上階。

部屋のカギを開ける叔父。あまりの展開に、思考が追い付かないままだった私。

このまま、初体験が・・・と、緊張の度合いが高まってきた。

部屋に入ると、

「ゆっくりしましょう」

と、話す叔父。さっきは、荷物を入れるだけだったから、入口しか立ち入らなかった部屋。

広い。10畳ほどの和室。6畳ほどのベッドルーム。そして、広縁に、露天風呂。ベッドルームから見える露天風呂と夜景。非日常的な空間。

和室には座卓と背もたれ椅子。

「疲れたでしょう」

と、話す叔父。ずっと気になっていたのは、叔父の言葉が敬語なこと。そう、日光江戸村以来、ずっと。

「叔父さん。さっきから、気になっているのですが、なぜ、敬語なのですか?」

と、訊くと、

「江戸村でお姫様と家来でしたので、そのままにしています」

と、話す叔父。私が首を傾げると、

「というのは、言い訳で、妻とはこんな感じだったのです」

と、話す叔父。そう言われると、以前、父の葬儀の時の美里叔母さんと宗次叔父さんの会話も、そんな感じだったかも。あのときは、悲しみで、そこにあまりこだわらなかったけど・・・。

「夫婦で敬語だったのですか?」

と、訊くと、

「そうですね。妻が僕に敬語を使うので、僕も妻に敬語を使っていました。あと、外では、一人称は『俺』なのですが、家では『僕』でしたね」

と、笑う叔父。夫婦の暗黙のルールだったのかしらと思うと、そういうのもいいなあって思う私。

「わかりました。私もそうします」

と、私が言うと、叔父は、

「茉莉ちゃんは、ずっと敬語ではなしていますよね?」

と、私に訊くので、言われると確かに。

「そのままでいいですか?」

と、私が訊くと、

「いいと思いますよ。僕はその方が慣れているし、妻と一緒にいるような気持ちになれるから」

と、話す叔父。

「さっきは、ビックリしました」

と、エレベーターでのキスのことを話すと、

「kissも初体験ですか?」

と、訊く叔父。私が頷くと、

「なるほど。初々しいわけですね」

と、微笑む叔父。
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