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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第13章 余韻と反省会
湯船の淵に座って、足湯状態で空を見ていると、満天の星。湯船に浸かっている叔父も空を見上げていた。

ふと、視線を感じて、視線を下ろすと、叔父が私を見つめていた。

「どうかしましたか?」

と、私が訊くと、

「娘も、あと数年、生きていたら、茉莉ちゃんみたいになれたかなって思ってね」

と、話す叔父。昨年、11歳で亡くなった従妹。母親似だったのは、私も知っているし、7歳差だったけど、会うことも多かったし、私のなかでも思い出は多い。私と美里叔母さんが似ているなら、母親似の従妹の恵里ちゃんとも似ているはず。確かに、恵里ちゃんは私の小学生の頃に似ていた。一緒にお出かけすると、間違いなく姉妹として扱われて、『お姉ちゃん』『妹さん』だった。

でも、そんな恵里ちゃんは、もう、この世にはいない。目の前にいる叔父は、昨年、娘を、今年、妻を亡くした。

「医師なのに、娘の命も、妻の命も守れなかった。虚しさだけが残ったよ」

と、涙ぐむ叔父。そう。従妹の恵里ちゃんは、私と違って、勉強ができた。それは、多分、父親である叔父の血かもしれない。でも、母親である美里叔母さんの血が、遺伝子が、癌を誘った。

「誰にも守れないわ。私だって、いつ死ぬかわからない」

と、私は話した。実際、そうだった。今はともかく、15年くらい前は、今以上に、癌は不治の病だった。今は、予防も、治療も、薬剤も進歩した。でも、あの頃は、そうではなかった。『日進月歩』で、癌は早期発見で治る病になりつつある。でも、あの頃は、違った。早期発見が重要なのは一緒だったけど、転移していたら、ほぼ無理だった。若いと転移も早い、ステージが進むのも早い。だから、見つかった時には手遅れが多かった。

私もいつ見つかるかわからないという恐怖と、見つかったら、この歳だと終わりだと思っていた。

父が癌で亡くなってから、私の生き方は刹那的になっていたかもしれない。何かを頑張っても、成果が出る前に死んだら意味がないという考え方になって、投げやりだった。

でも、この時から、少し変わった。

初体験で何かが変わったということもあったかもしれないし、叔父に情がわいてきたということもあった。でも、叔父に負担は掛けたくはなかった。私は叔父が好きでもいいけど、叔父は私を好きならないでほしかった。なぜなら、私はいつ死ぬかわからないから。
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