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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第16章 セックス談義
「何が面白いの?」

と、訊くと、

「思い出し笑いを見られてしまったね」

と、答える叔父。

「そうだね。美里が求めてきた内容が、笑えるものが多かったからね。今から思うと、美里は、若干、いや、相当に『変態』だったのかなって。冷静になって思い返すと、『無茶』をしていたなって思うから」

と、思い出し笑いの理由を説明する叔父。といっても、内容がわからないので、私には、何が何やらわからない感じでした。私のそんな表情に気が付いたのか、

「そうだね。内容を言わないと、何が『変態』で、何が『無茶』をしていたのか、わからないよね」

と、答える叔父。まさに、その通り。

「最初、付き合い始めて、結婚して、恵里が生まれて、この辺りまでは普通というか、そう取り立てて『変態』という感じでもなかったし、『無茶』をしているという感じもなかったよ。でも、いつからだったかな」

と、思い出すように天井を見上げた叔父。ため息を吐く。思い出せないのかもしれない。

「そう。出産してから、なぜか、セックスの回数が増えてきて、動画を見せて『こういうプレイをしたい』『こういうことをあなたもできる?』『こういう風にして欲しいの』って、言うことが増えてきて、最初は辟易することもあったけど、僕も途中から、少し美里の考えていることがわかるようになった。それは、特に、要求が激しくなってきたときだった。そう、茉莉ちゃんのお父さんが亡くなって、美里が『妹も兄も亡くなったわ。次は私だわ』と言い出して、残された人生は少ないと思うの。私のわがままに付き合ってくれる?」って訊かれたときに、それまでのことも、理解できたという感じだったよ。それまでも、なんとなく、生き急いでいるという感じを持っていたのだけど」

と、叔父は話した。

「それって悲しいね」

と、私は思ったままを口にした。自分もその立場なのだけど。生き急ぐ感じ。わかったわ。残された時間が、普通の人なら平均寿命から引き算かもしれないけど、どこから引いていいのかわからないという感覚。残りの時間はどれくらいなのか。それすらわからないという感覚。見つかれば、あとは、真っ逆さま。

背中に時限爆弾を背負わされている感じ。スイッチが入ったら、もう終わり。あとは、カウントダウン。そういう気持ちで生きていたから。
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