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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第17章 叔母への対抗心
このとき、なぜ、そんな心境になったのか、自分でもハッキリとはわからない。

単なる負けん気だったのか、それとも、嫉妬だったのか。嫉妬だとすると、何に対する嫉妬なのか。

叔父との関係での嫉妬だったのか、それとも、叔父の心に明確に、愛の痕跡を残して、亡くなった美里叔母さんへの嫉妬だったのか。

私は、考えたわ。美里叔母さんが一色に染めた叔父の心に、私は、叔父と初体験を経ることで、橋頭堡を築けたはず。ここからの展開で、美里叔母さんが染めた叔父の心に、私の生きた痕跡を残せる。というより、残したい。

叔父と結婚したいとか、そういう気持ちはなかった。だって、叔父の妻の座は、亡くなっても美里叔母さんの定位置だと思っていたから。

あれだけ、拒絶していた叔父が、私と再婚するなんて、あり得ないことだってわかっていた。

というより、私の心の中に『結婚』という言葉はなかったわ。私が死んで悲しむのは、生まれてくる子供だけで十分だから。

だって、子供より先に死ぬのは、世間では一般的だから。ただ、叔父の場合は、私より20歳以上も年上。妻を亡くして、悲しみの底にあるのに、私を好きにならせて、私が先に死ぬなんていう残酷なことを私はしたくはなかった。

私は叔父を好きになり始めている自覚はあったけど、叔父には、私を好きになって欲しくはなかったし、愛されたいなんてゆめゆめ思っていなかったわ。叔父の愛情の対象は、あくまでも、美里叔母さんであって欲しかった。

ただ、記憶の上で、叔父に亡くなるまで、私を覚えていて欲しかった。茉莉という女の子がいたこと。いろいろなことを一緒にしたことを覚えていて欲しかった。

だから、私は、

「美里叔母さんと、叔父さんはどんな『変態』な『無茶』をしたの?」

と、叔父に訊いた。怪訝な顔と、納得の顔と、ない交ぜな表情になった叔父。多分、ないかもしれないが、あるかもしれないという予測が叔父のなかでもあったのだと思う。

「知ってどうする?」

と、叔父は私の顔を見て、私の心底を探ろうとしているように感じたわ。

「叔父さんは、美里叔母さんがなぜ、そういう『変態』な『無茶』をしたか、わからないと言っていたわよね。そして、理由がわからないって」

と、私が言うと、頷く叔父。
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