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未婚の母、桃宮茉莉32歳
第21章 制服で悪戯
そんなとき、叔父が見つけたのは、あの家。叔父の友人で父の友人でもあった高岡誠司が売却するから出ていってくれと言っていたあの懐かしい家。

昨年の秋に発生した金融危機の影響で、あの家が壊されずに残っていたのです。高岡誠司と某不動産会社との間で、売却契約は終わっているものの、引き渡し期限が延期になり、高岡誠司が、まだ、所有者のままで建物の解体も始まる予定が未定の状態になっていたのです。

叔父がたまたま通りかかると、『立ち入り禁止』の看板があるものの、解体はされておらず、高岡誠司に問い合わせると、

「金融危機のために、計画が延期になって困っている」

と、言うことで、

「売買契約は終わっているのか?」

と、訊くと、

「終わっているが、俺も金が振り込まれないことには、建物を引き渡すわけにはいかないからね」

と、言っていたらしく、叔父が、

「それまで、茉莉が使ってもいいか?」

と、言うと、ある意味、無理を言っていたと自覚していた高岡誠司は、了解してくれて、鍵を貸してくれたそうで、解体の日時が決まったら連絡するということになったらしく、

「高岡がOKしてくれたから。しばらく、あの家を使える。家財道具はないが」

と、言うことだったわ。私と叔父は、そこで待ち合わせをするようになったわ。さすがに、旧我が家。迷うこともなく、たどり着けるし、周囲の家は立ち退きが終わって、空き家か、解体されて更地になっている状態だったし、『立ち入り禁止』の看板があることもあって、誰も近づかない状況だったわ。

私は事前に行って、母が福岡に行ってから、そのままになっていた部屋を掃除したり、以前、使っていた布団などを干したわ。母が福岡に行って2年以上。ずっと空き家だった旧我が家。傷みが少なかったのは、高岡さんが、定期的に、窓を開けたり、一応、掃除をしていてくれたから。解体するのに?と思ったのですが、高岡さんは、契約済みなのに、対価が振り込まれないうえに、解体も延期とあって、万が一、契約破棄になったときに備えて、管理をしていたそうです。高岡さんにとっても、あの長屋は、小さいころに住んでいたこともあって、懐かしい存在だったそうです。だから、解体工事が始まるまで、というより、引き渡しが終わるまで、ときどき、来て、往時を懐かしんでいたそうでした。
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