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第3章 御曹司の裏の顔

日本でも有数の大財閥
その財閥の現会長である男の邸宅に、ひなは来ていた

「はぁ…なにこれ、お城？」

高い白壁を見上げて思わず呟く
隣に立つ作業服の男が小声で応えた

「日本でも５本指に入る大金持ちの一族だからな。このバカでかい屋敷に会長夫婦とひとり息子が住んでるそうだ。3人でこのでかさだぜ…、召使いも山ほどいるって噂だ」

「そうなんですか…、庭の広さも半端じゃないですね」

「ああ。ま、その金持ち様のお陰で、俺らこうやって金を貰えるんだ。ありがてぇじゃねえの。…お前、新人か？えっと…杉山…」

男は自分と同じ作業服の胸にかかったネームプレートを確認する

「はい、今日が初めてです。よろしくお願いします」

「おう、よろしくな。しかし…お前背も低いし、この仕事大丈夫かぁ？しかもマスクなんかして、風邪かよ」

「俺、身体は小さいっすけど体力には自信あるんで！マスクは、花粉症対策ですよ」

訝しげにひなの顔を覗き込む男に、ははは、と笑いながら答える
ちょうどその時、目の前にあった鉄製の門が自動で開かれた

『庭園の清掃業者の方々ですね。どうぞ、お入りください』

高い場所にあるインターホンから、丁寧な台詞が流れる
それを合図に、数十人の同じ作業服を身に着けた男達はどやどやと敷地に足を踏み入れて行った