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情報ねずみは眠らない
第3章 御曹司の裏の顔
「…ふう」

庭園に散らばった作業員に紛れ、ひなは一息つく
今回の仕事は、いわゆる潜入である
この屋敷は、年に数回落ち葉の処理や池の掃除、雑草除去などを清掃業者に頼んでいた
作業員達は全員男で、この仕事に慣れた者ばかりのようだ

男装し作業員「杉山」として屋敷の敷地内への潜入に成功したひなは、怪しまれないよう落ち葉を集めながら屋敷を盗み見る
日本とは思えない程、豪奢な建物だ

情報屋としての仕事内容は、「会長宅の家の間取りを調べる」こと
実際に屋敷の中に入るわけではないので、外から見て、西向きに部屋が4つある…とか、2階の部屋には広いバルコニーがある、とかそういったことを、他の作業員の目を盗み端末に打ち込んでゆく
拍子抜けするほど単純な情報だが、これが欲しい人間には高く売れるのだ

「今回の仕事は、楽勝かも」

マスクの下でほくそ笑み、表向きは清掃作業に徹しているふりをする
しばらく作業を続けていると、頭の上から声をかけられた

「ねぇ、業者さーん、ここのバルコニーにも枯れ葉が溜まってるから、掃除しに来てよ」

声の方を見上げるとバルコニーから身を乗り出して、誰かがこちらを覗いていた
逆光で、顔や体型は見えないが、声の感じから若い男だということがわかる

「すいません、屋敷の中には入ってはいけませんので」

清掃業者の決まりで、たとえ呼ばれても屋敷の中に足を踏み入れることは禁止されていた
しかしバルコニーの男は構わずに続ける

「枯れ葉回収するだけだよ。ね、お願い。上の人には僕から話すから!」

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