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情報ねずみは眠らない
第4章 情報屋の前の顔【前編】
モスグリーンのコートを来た男は、笑顔を張り付けたまま首を傾げている
死ぬ…、そうか、さっき見た男に刺されたんだ…
ぼんやりと先ほどの光景を思い出そうとするが、一瞬の出来事だった為、まるで霞がかったように記憶は曖昧だ

「知らないなら別にいいよ~。適当に漁って帰るから」

「……!!げほっ…ま、まっ…て・・!」

踵を返そうとする男を思わず呼び止める

「けふっ…ごほっ……  た、たす・・・けて・・・」

それは感情ではなく本能から直接出た言葉だった
死にたくない…このまま死にたくない…!
血まみれの母親が台所で倒れているのが、視界の端に映る

「助けて、ねぇ…。残念だけど、俺警察でもお医者さんでも無いんだ~」

「お、お父さんの…研究…資料、隠し場所……教える…から…げほっ」

その言葉を聞いて、明らかに男の目つきが変わった

「やっぱりあるんだ、研究資料」

父親が研究所で得たデータを、時々持ち帰り家に保管していたのを、ひなは見ていた

「助けて…くれるなら、教えて、あげる…。約束して…くれる、なら…」

「…俺と交渉しようっていうの?あはは、君おもしろいね~。でも君はここで死なないといけない人間だか・・・」

「・・・約束・・・して・・・」

ひなは男の言葉を遮り、自由の利かない身体を強張らせる
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