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第4章 情報屋の前の顔【前編】

パチンと風船が割れるように、ひなは目を開いた
眠りから目が覚めるというより、突然身体のスイッチが入ったかのような覚醒だった
ひなはわずかに身体を動かす、閉じられたブラインドからはゆるく西日が差している
…私、薬を飲んで、それからどうなったんだっけ…
相変わらず背中はズキズキと痛んでいる
１時間くらい寝てたのかな…と、ひなはぼぅっと天井を見つめる

そこに蓮谷が扉を開けて入ってきた
目覚めたひなを見ると、驚きで目を開いた

「…起きた…のか…」

「うん、いま」

恐る恐る近づいてくる蓮谷を不思議に思いながら答える

「…あれから丸１日昏睡状態だった。呼吸も浅かったから、たぶんこのまま死ぬもんだと思っていたが…成功したようだな…」

ひなはわずかに驚いた表情を見せたが、すぐにふふ…と口元を緩ませた

「お父さんとお母さんの薬だもん…、悪いもののはずが無いよ…」

蓮谷に背中の刺し傷を診てもらい、軽い食事をとった
蓮谷の説明によると、かなり深く刺されてはいるが、奇跡的に内臓を傷つけていない為、このまま回復するだろう、とのことだ
お父さんとお母さんが守ってくれたのかな…
そんなことを考えながら、ひなは治療に専念した

数日置きに、また新薬を飲んで昏睡し、起きて、数日経ったらまた新薬を飲み、深く眠る…そんな日々が続いた
目に見えて、ひなの背中の傷は小さくなり、眠りから目を覚ます度に傷口の痛みが消えてゆくのを感じた
そして、１か月後には鈍った身体を動かし、リハビリができる程に回復したのだった
今の自分の身体は両親の薬で生かされている。そう思うと、腹の底から気力が湧いてくる