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ふみふみ
第7章 暖かな箱
そこにも、アタシの姿はなかった。
そもそもアタシは水が嫌いだ。
だから、バスルームにはアタシは行かない。
それに、3点ユニットのバスルームだとトイレがある。
そのトイレの蓋が閉っていなければアタシが落ちる可能性がある。
なので、バスルームや人間の入るトイレには行かないようにしている。
それを七海ちゃんは分かっていなかった。
七海ちゃんは狭い玄関に置いてある小さなシューズボックスの扉を開けてみる。
そんな、狭いところにアタシは入ったりしない。
と、言うかもう身体も大きくなってきたので靴箱の中には入れなかった。
もっとアタシが小さな時は、良く玄関に来ては七海ちゃんの靴の中に入ったりして遊んでいた。
そんな時は、いつも途中で眠くなってしまい七海ちゃんの靴の中で眠っていた。
でも、もうアタシは靴の中に入れるように小さくはなかった。
それも七海ちゃんは忘れているらしい。
七海ちゃんは部屋に戻ると小さなクローゼットを開けてみた。
ハンガーに掛かった洋服をガシャンと鳴らして横にスライドしてゆく。
収納の奥の壁が見えた。
そこにもアタシはいなかった。
「こんな、狭い家なのにどこに行ったの?」
七海ちゃんはちょっと困っている様だった。
「フミぃ…どこにいるのー?」
七海ちゃんがまたアタシの名前を呼んでいる。
でも、アタシはこの暖かな場所から離れられないでいる。