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光の魔導師レド
第1章 この世界を救うために…


何の音もしない、静かな闇の中。


次元の狭間で、璃子と共に、浮かんでいるのは、魔王グラティス、彼は、異世界空間全ての闇を支配する者。

どの世界をも行き来出来る魔力を統べる者。


璃子は、息絶え絶えに、彼の姿を見た。


長い黒髪、赤い瞳は、血に飢えた狼のようだと思った。

腰に据える剣は、黒々くマグマのごとく光っていた。


『我が名は、グラティス。お前は、光の魔力を持つ人間か?』


『…ああ』


グラティスは、うっすらと笑っている。


『何故、こんなところに来たのだ?』


『あたしの、世界を救うために…』


グラティスは、璃子を見る。

彼女が何の為に、異次元空間に飛び込んで来たのか、その理由を魔力の備わった赤い瞳で見透かす。


『ほぅ、良かろう!私がその望みを叶えてやる。その代わり、対価を頂く!』


璃子は、時間がないと思い、この得体の知れない魔導師に耳を貸すしかなかった。


『…その対価とはなんだ?』


『先程、わたしが放った小僧を探せ、その小僧の願いを見事叶えてみせよ?』


『啓太の願いを?』


『そうだ!!』


丁度、自分も啓太を探さなきゃならないと、思い、即答した。


『…分かった』


『交渉成立だな?』


グラティスは、魔方陣を作り出す。


金色に移る膜の中に、地球が映し出される。


『この世界にある、核爆弾を全て無くそう!』


グラティスは、世界にある全ての核爆弾を次々とブラックホ―ルの中へ消していった。

…すると…

地球の表層に覆っていた赤く黒々とした大気が消えていく。


『…あたしは、間に合ったのか…?』


『ああ、わたしがお前の世界を、救ってやった。』


璃子は、ほぅっと、胸を撫で下ろした。


『さて、次はお前の番だ!』


『何をする!!』


腰に据えていた剣を引き抜くと、璃子の顔に刃を向けた。



『その金色に輝く目をひとつ頂く!』



グラティスは、容赦なく璃子の右目をえぐりとる。


『お前の右目を貰わねば、地球という世界を救ってやった対価の量と、釣り合わんからな、悪く思うなよ?』


『ぎやああああ―!!!!!!!』


璃子の叫びは、断末魔に消える。

意識は遠退き、グラティスは、彼女を、ある異世界へ転送した。



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