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あなただけ今晩は
第3章 泥湯温泉
泥湯温泉にはこんな昔話しがある。
昔ある乙女が病に苦しみ温泉に浸かりたいと思っていた。
だが、あまりにも湯の色が透明なため、恥ずかしさのあまり浸かれないでいたところ、鼻の長い天狗が現れ米の磨ぎ汁の様にすっと白く濁してくれたらしい。
乙女は喜んで温泉に浸かり、病も日に日に回復し治ったと伝えられている。
「泥湯」という名称は湯の色が濁っているところに由来しているといわれている。
その泥湯温泉の中でも奥山旅館とはかなり有名な宿だった。
奥山旅館は“日本秘湯を守る会”の会員の宿でもある。
日本秘湯を守る会は、地球の恵みであり、限りある地下資源である温泉に感謝することを忘れることなく、その利用と管理に充分な配慮をし、枯渇させることなく守り続けるために自然環境の保持・保全に真摯に取り組んで行く宿の集まりを言うらしい。
奥山旅館は2019年に再オープンしたのだが、私たちが行ったのはもっと前の話しになる。
今の宿とはちょっと違っていて古い建物だった様に思う。
アキラは泥湯温泉にある小さな駐車場に車を停めた。
宿に着いたのはチェックインできる時間だった。
多分、午後3時頃だろう。
一泊の予定だったのでそんなに荷物は多くなかった。
部屋は普通の畳敷きの10畳程の部屋だったと思う。
部屋に入ると私はいつもの様に直ぐに旅館の浴衣に着替えた。
部屋の座卓にはお茶とお菓子が用意してある。
そのお茶とお菓子を頂いた。
アキラは長い間運転していて疲れたのだろう。
直ぐに、部屋に置いてある布団を敷いてそこに横になりゲームを始めた。
アキラは基本ゲーマーだったのでゲーム機は旅行に行くときでも必需品だったのだ。