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あなただけ今晩は
第3章 泥湯温泉

私は、お茶とお菓子を頂くと奥山旅館にある温泉へと行くことにした。
今の奧山旅館にはそれぞれの湯があり異なる源泉を引いているらしい。

『天狗の湯』、『川の湯』、『新湯』それぞれの趣が愉しめるようなのだ。
泉質は単純温泉、単純硫黄泉、酸性-鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉で源泉かけ流しになっている。

効能は、疲労回復、高血圧症、動脈硬化、リウマチ、など様々だ。
だが、私たちが行った時の温泉は単純硫黄泉だけだったと思う。

私は、夕飯までの間に温泉を愉しんだ。
ゆっくりと浸かる長湯が好きだったのだ。

湯から上がり部屋に戻るとアキラも浴衣に着替えていた。
相変わらずゲームをしている。

アキラがこう言ってきた。

「彩ちゃん、俺も温泉浴びてくるよ…」
「うん、行ってらっしゃい…」

そんな会話をしてアキラは温泉に浸かりに行ったのだ。
アキラが温泉から帰って来てから夕飯の時間になった。

夕飯は確か、大広間のお食事処で食べた記憶がある。
夕飯のメニューは地元の山菜やきのこの小鉢、茶わん蒸し、鯉の昆布〆、季節の鍋、などだった。

アキラは山菜やきのこが大の苦手だった。
なので、山菜やきのこの小鉢などは私に渡してきたのだ。

自宅で鍋などをやる時も、アキラはいつもしいたけやしめじなどをよけて私の方に持ってくるのだ。
その姿は嫌いな食べ物を親に渡す子供に似ていた。

そんな姿を見ても私はとても可愛いと感じてしまう。
夕飯の時はビールを頼んだと思う。

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