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あなただけ今晩は
第10章 湯宿温泉
仁寿2年(852)2月28日、須川村の弘須法師による大乗妙典誦行満願の夜、岩穴にこもって読経したところ薬師如来が現れ、湯が突然湧き出したという伝説が残っている。
かつてはその名の通り、三国街道の宿場町として30軒ほどの宿が軒を連ね、旅人や湯治客で賑わっていた。
その名残として「竹の湯」、「松の湯」、「小滝の湯」、「窪湯」の4つの共同浴場があり、今もなお古い温泉宿の面影を感じることができる。
泉質は硫酸塩泉で効能は婦人病、胃腸病、高血圧、動脈硬化などらしい。
湯宿温泉は湯治場でも有名な温泉だった。
湯治場と温泉旅行の違いとはなんだろう。
一泊二日などで、温泉に浸かり日々の疲れを癒したり、温泉地の観光をしたりするのが、温泉旅行だと言うらしい。
特定の疾病の療養を目的とし、一定の期間、温泉地で温泉療養を行う為に滞在するのが湯治と呼ばれる。
昔の湯治場には、長期滞在する湯治客がメインで、一泊などの温泉客を断っていたという湯治場もあるほどだ。
湯治の日数 湯治の日数は、昔から「一巡り7日、三巡り21日」などと言われている。
現代医学でも、人間の生体リズムはほぼ1週間サイクルであること、生体リズムの乱れが温泉療法によって正常になり健康状態に戻るには4週間程度が必要であることが確認されている。
日本古来の湯治の単位や期間は、医学的にも理にかなっている様なのだ。
私たちが泊った宿には一般の観光での温泉旅行客と湯治で来ているお客さんと両方がいた。
私たちが泊った部屋の向かい側の部屋には3人組の老婦人たちが湯治に来ていた。
湯治は基本、自炊なのだ。
部屋には小さいながらもキッチンが備え付けられている様だった。