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第24章 片想い

言い足らないような気がしたが、ウルフはそこで話を終わらせた。

名指しされたうちの1人、シーライオンが、

「俺も、無理にとは言わない。ただ、わかって欲しいこと。それは、俺は、AV男優という仕事をしてきた。ビジネスとして、女性を抱いてきた。そこに恋愛感情はなかったし、あってはならないのがAV男優という仕事だった。そんな俺が、初めて恋愛感情をいだいたのが、千佳子さんだということ。受け入れてくれとは言わない。でも、もし、少しでもいい、受け入れてもいいと思うなら、また、会ってくれ。会うだけでいいから」

と、ある意味、懇願している風だった。AV男優として、セックスをビジネスと割り切っていた冷めた男の熱い感情が伝わってきた。千佳子さんの表情は、硬かった。でも、視線は、柔らかく感じた。シーライオンが財布から名刺を出して、千佳子さんに渡した。千佳子さんは、黙って受け取った。

最後に、ベアーが、

「ラスト・プレゼンテーションだな。ウルフも言っていたが、いろいろな意味で、千佳子さんにはポテンシャルがあると俺は思っている。千佳子さんが、自覚していないポテンシャルが。俺は、縄師だ。縄で、それを引き出すことができると思っている。ここにアドレスがある。ネットで閲覧できる。パスワードは、B・E・A・Rではなく、B・A・R・Eだ」

と、言って、名刺を渡した。千佳子さんが笑って、

「クマじゃなくて、裸なのね」

と、小さく笑いながら、名刺を受け取った。

俺様も、慌てて、連絡があるとは思わないが、一応、名刺を渡した。

千佳子さんは、3枚の名刺を手にして、俺たち全員に視線を送って、

「お疲れ様」

と、言って振り返ってドアを開けて出て行った。ドアがゆっくりと閉まる。その向こうに、歩いていく千佳子さんの後ろ姿が見えて、消えて、ドアが閉まった。