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第32章 銀座

「それに、俺は若い女の子には興味があまりないんだ。まったくゼロというわけではないけど。もっと言えば、水商売が好きな女の子もね。俺様自身が、ホストだからかもしれないが、遊び人は嫌いなんだよ。真面目な堅気な女性が好きだ。例えば、千佳子みたいな」

と、私を見つめるジラーフ。

「さすが、ホストね。口が滑らか。私のことなんか、忘れていたでしょ」

と、私が笑うと、

「そんなわけがあるものか！ずっと待っていたんだぜ」

と、話すジラーフ。薄っすら目に涙が溜まっていて、鼻を鳴らして、悪さをして怒られて、泣いている子供みたいに、私を見た。

「ウルフは、『そのうちに必ず来る』と繰り返すだけで、一向に、千佳子さんが来る気配はなくて…」

と、話すジラーフ。『必ず来る』とウルフは確信していたの？確かに、結果的には正解だったのかもしれないけど…。

「言っておくけど、あなたの店があるかどうかを確認するために来ただけだから」

と、私が言うと、気落ちしたジラーフ。

「そ、それだけ？本当に、それだけ？つれないな」

と、嘆いた。

「つれない？」

と、私が訊くと、

「俺たちと、あの時みたいに」

と、話すジラーフ。

「バカなことを言わないで」

と、突き返すと、

「わかったよ。でも、そこのプロントで、コーヒーを飲みながら、話せないか？」

と、訊くジラーフ。なんとなく、このまま、バイバイするのは可哀そうな気もしたし、なぜか、話してみたい気分になったわ。

「じゃあ、コーヒーだけよ」

と、私が答えると、満面の笑みで、

「ここで、待っていて、すぐに戻ってくるから」

と、到着したエレベーターに乗り込むジラーフ。

「どんなお店か見せて」

と、私が乗り込むと、

「ああ、見て行ってくれ」

素直に喜ぶジラーフ。6Fに着くと、同じフロアには寿司・割烹やラウンジ。その奥に『CLUB GIRAFFE』と艶消しブラックの金属にゴールドの文字で書かれた入口。

扉の内側は、ワインレッドのふかふかの絨毯。2人掛けのソファーがテーブルを挟んで2脚。それが6セット。バーカウンターに、ステージ。薄暗い照明。

バーカウンターに買ってきたワインなどを置く。配送じゃないの？と思ったが、店が小さいから、これで十分なのかもしれない。