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えっちなBL短編集
第2章 狂信的な夜[文系大学生×俺様ホスト]
『おい』

その声に一気に心臓に血液が流れ込んだのを感じた。顔を向けるとそこには…

「俺の男に手を出すな。下がれ」

紫は俺の横に来て、肩を掴み、新人ホストに向かってそう言った。ホストの紫は格好良すぎる。(新人ホストは脱兎の如くすぐに下がって行った。)

「で、お前は何しに来たんだ。“王子様”?」

期待を裏切らない“王子様”呼びに興奮したなんてみなまで言うまい。

「紫に会いたかった」
「直球だな。だが、ここじゃ源氏名で呼べ。いくらお前でもそれは守ってもらおうか」

ああ…紫は本当に美しい。No. 1ホストは伊達じゃない。紫になら全財産を渡してでもいい。

「何を惚けている。俺に見惚れても良いがちゃんと話は聞け」
「ああ、本当に綺麗だ。ここに来て良かった」
「また始まった…」

紫はそっぽ向き、足を組んで唇を少し尖らせた。やばい。怒らせてしまったか?

「悪い、店に来て迷惑だったか?」
「…折角ここに来たんだから楽しませてやる。相手が誰であれこの場じゃ俺はホストだからな」

かっこいい…!自信満々な顔が最高にいい。今すぐにその口にキスをしたいが…今は俺は客だ。紫もホストに徹してくれているのだから、俺も今は客としてルールを守らないといけない。

「ほら、何飲む?ウーロンハイか?」
「紫の好きな…
「名前」
「な、ナガレの好きなものでいいぞ」

「…シャンパン」

不貞腐れたように言った。その顔も最高に可愛いな。抱きしめたい衝動を抑えて、ちょうどテーブル前を通ったホストを呼び止める。

「王子、どうされましたか?」
「シャンパン頼めるか」
「シャンパンですね!王子気前がいいね!すぐにお持ちします!」

ホストは紫の方にウインクして、奥へと消えた。なんだあいつ、紫に馴れ馴れしいな。

「おい、いつまで待たせる。早く来い」

ぽんぽんと席を叩く紫のもとへ行く。それはもう首に鎖を繋がれた犬のように。自然と紫の前にすると膝を床につけ、彼を見上げる。

「ふ、まさに王子みたいだな。さっさと隣に座れ」

王子はあなただと思いつつ、横に座る。距離が近く机の下で足が当たている。ごくりと唾を飲み込み、緊張する。そんな俺に紫はさらに近づき、ぐいっと俺の耳を引っ張って耳元でこう言った。

『家に帰ったら覚えてろ。勝手に店に来たお仕置きしてやる』
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