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えっちなBL短編集
第5章 神様の生贄になった子供達
いつもと同じ風景を歩きながら駅へと向かった。
学校へは最寄りの駅から電車に乗り、30分ほど歩いたところにある。

今の6月という季節は風が吹くたびに花の香りがする。何の花の匂いだろうか。金木犀?いや、違うか。

「(そういえば…)」

このお守り…変なものでも入っているんじゃないか?
お守りは三つ巴の家紋が刺繍され、母さんの手作りに思えた。母さんが俺に何かくれたことや、何かしてくれた記憶はない。
ますます怪しい。

中身が気になるが、お守りの口は硬く結ばれ簡単に開きそうにない。
今開けるのは諦めようとポケットにしまった。


最寄りの駅に着き、電車に乗りこむ。偶々座ることができ、さっきのお守りを取り出す。苦戦しながら紐を解こうとするが、余計に結び目がキツくなる。

「(ここをこうして…ああもう全然解けない)」

「あっ」

気づく頃にはもう遅い。すでに降りる駅を通り過ぎていた。次の駅で降りると、そこは無人駅だった。とりあえず反対側から電車が来るのを待った。

「…全然来ないな。そもそもここは何駅なんだ?」

辺りを見てみたがよくわからない。まぁ、いいや…そのうち来るだろう。また集中して電車を逃すのは嫌なので今度はちゃんと待った。

ふわりとまた6月の花の匂いがした。この匂い、眠くなるな。
寝ないようにしないと。

しかし、意思とは関係なく気がつくと眠ってしまっていた。



「っ…」

まただ、この感じ…。不意に体を締め付けられ、意識はあるのに体は動かなくなる。所謂、金縛りってやつだ。

足先から何かが這い上がって来て、締め付けられる。足から腰、腹…無数の何かが体を締め付けてくる。子供の頃によく見た悪夢。

嫌だ嫌だ、この感覚だけは本当に嫌いだ、寒気がする、早く目を覚ませ、起きるんだ…!

目を覚まさなければ、そう思うのに体は動かない。締め上げてくる何かは首に到達する。

ひんやりと鱗のような感触が直に首にあたり、寒気が止まらない。嫌だ、嫌だ、っ、気持ちが悪い。

苦しい、助けて、葵兄さん…!

水の中でもがくような動きにくさを感じつつ、必死に手を伸ばす。

「!」

ハッと目が覚め、気がつくと目の前にいた誰かの手を取っていた。顔を上げるとそこには仮面をつけた男がいた。

「うん、助けてあげる」

その声は正真正銘、葵兄さんの声だった。
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