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えっちなBL短編集
第5章 神様の生贄になった子供達
「ああ、幼い君がよくちょっかいかけていたのを思い出した。泣いてお兄さんに慰めてもらっていたね。今はこうして僕が慰められるのか。感慨深いよ」

「っー、お前の仕業かっ…!っ、く…!」

子供の頃やたらと蛇に遭遇したのも、夢に蛇が出て来たのもこいつのせいだと知る。目をぎゅっと瞑って、蛇に耐える。

「やっ…!た、たのむっ!本当に蛇だけはやめろっ…!」

「怖いなら目を瞑るといい。ほら、怖くない怖くない」

長い袖で顔を覆われ、抱きしめられる。葵兄さんじゃないとわかっていてもそれでも落ち着く。自分の荒い息がどんどん静まっていく。

「ふふふ。柊、いいことを教えてあげる。あれが蛇だと思えば蛇になるし、帯だと思えば帯になる。まだ上手く自分の認識をコントロールできないかな?」

その言葉にそうか、と気づく。こちらの認識を変えればいい。実際には帯だか蛇だかわからない。でも決めつけて“帯”だと思えばいい。

「…っ、はぁ…っ、」

視界が明るくなると、思い込みは成功した。蛇の姿はなくなった。

「実体のない世界っていうのはこういうことさ」

「…よくわかった…」

視界には俺の顔を覗き込む6本の“帯”が映った。しかし、さっきの蛇の顔を思い出して、怖くなる。今にもあの蛇に変わったらどうしようか。

「ふふ、小さい頃からずっと君に狙いを定めていたから、君から求められると嬉しい」

手を握りしめ返され、自分でも気づかず神様の手を握ってしまっていることに気づいた。

「何で…俺に狙いを…?」

「僕はしつこくてね。君のことは初めて会った時から這いつくばってでも離さないって決めてるんだ」

手を取られ、手の甲に柔らかいものが触れた。見ると、神様の仮面が面布に変わっており、彼の口元が見えた。

「あ…あっ、っ、」

これはダメだ…。葵兄さんの声だけならまだしも口元まで…そっくりだった。俺が頭で神様の姿を作り出しているんだから変えたらいい。

でも何度も考えても、ダメだ。
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