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花魁〜OIRAN〜
第12章 夕霧
その日から、お咲は夕霧と名を変え、店に出るようになった

もともと廓界隈では評判の美人の上、池田屋がお咲の水揚げがいかに尋常でなく素晴らしかったかを、そこここで吹聴してまわった為、夕霧と同禽したい輩はひきもきらなかった。

しかしお咲を預かる店では、安売りしては値打ちが下がると踏み、最高級の値で夕霧を売り出した。

そのため並みの稼ぎの町民風情は門前払いを食わされることが多く、その代わりにお忍びのお武家様や大店のご隠居、やんごとなき方のご烙印などが密かに夕霧のもとに通うのであった。

夕霧は、どんな相手に対しても偉ぶったりわがままを言うことなく、親切で優しかった。

金子だけはうなる程持っていても、年寄りだったり持病があって足もふらつくようなお大尽相手でも…

「旦那様、あちきは横でお酒をお相伴するだけでも楽しゅうありんす。
無理はなさらず眠うなったらあちきの胸を枕にお休みくださりませ」

そんな風に優しげな声を夕霧にかけられると、どんなに弱々しい病弱な年寄りであっても、不思議と力がわき、結局夕霧とひとつになることができるのであった。

今や磨きたてられたように美しく光る夕霧の全身にくまなく舌や指を這わせ、

「夕霧…夕霧…ぬしは観音様じゃ。それとも地獄からの遣いか?」

「旦那様…無理をなさったらお体にさわります。…ああ…あ…そんなところまでねぶってはなりませぬ…」

「夕霧…お前はどこもかしこも汚れておらぬ。足の指でも尻の穴でもかわゆうてならぬ」

そうして夕霧が潮を吹き気をやるまで、どの客も懸命に夕霧に奉仕するのだ。

「ああ…あちきは毎日、毎夜…天国にいるようでありんす」

そして男をとりもどした客と共に、夕霧も何度も何度も果てるのであった。

遊女が本気で気をやる。

それがまた夕霧人気に拍車をかけるのであった。
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