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第13章 日常



いかにも今出勤しましたという格好で、汗を流して鞄を抱えて。

「霧野、資料どうなった」

 え、どうって……。

「金曜日の夜、メールでお送りしましたが……」

「はあ? 刷って並べとけよ、もう会議始まるぞ」



 は? いや聞いてないし! 

っていうか、目ぇ通したんですか、部長? 
刷った後に修正入って刷り直しなんて嫌ですよ?



 ……なんて、言えるわけもない。



仕方がないので資料を人数分プリントアウトして、会議室に並べる。
並べ終わったとき、お客様たちが入ってきた。
部長が汗を拭きながらやってくる。

私は会釈をして退室。
あとは、資料に不備がないか祈るのみ。
部長、ちゃんと説明してくださいよ? 
もちろん、説明なしでも読めばわかるように作ってあるけれど……。



 ――会議室から離れ難いのは、資料が心配だからというよりは、自席に戻るのが億劫なせいだった。
結局、相馬に挨拶できていない。


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