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第13章 日常



「俺、そんな酷い顔してます?」

「してるしてる。ゾンビかと思った。女にでも振られたか?」



 その先輩の発言は、例えば私に対してだったらセクハラだったかもしれないけれど、相馬に対してだったら軽い冗談だ。
スキンシップといってもいい。

だから、そんなに真面目にとらえる必要はないはずだった。
相馬の返事に、心臓が止まりそうになった。



「まあ、だいたいそんなとこっすかね」

「え、まじ? 大丈夫? 話なら聞くよ?」

「はは、ありがとうございます。で、何の用ですか」



 相馬が無造作に立ち上がって、打ち合わせテーブルのほうに歩いていく。
先輩が喋りながら、私の脇をすり抜けて、相馬についていく。
私はそれを呆然と見送るしかなかった。
結局挨拶は叶わなかった。



 相馬……そうなの……?

 女の子に振られた寂しさを埋めるために、あの夜、私を受け入れたの?

 だとしたら――それは、私にとっては朗報だった。



 私に付き合わせたわけじゃない、相馬のほうにもメリットがあったのなら、よかった。
本心からそう思った。


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