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unbalance
第14章 予定外
「先方にご指摘いただいてどれだけ恥ずかしかったか……!」
だってそのデータは――、
と混乱しかけたとき、私の後ろから、部長に負けない大声がして、私はまた身を竦めた。
「あー、すみませんね、そのグラフ俺が作ったんですわ」
「何だ、相馬」
部長がその勢いに呑まれたように、ちょっと声のトーンを落とす。
「いやぁ、悪かったです。ぜんぶ作り直します」
と、部長の手元の資料を奪って、
「じゃ、そういうことなんで」
「……おい待て、私は霧野に頼んだんだ。何でお前なんだ」
「何でって……あの量の資料、一人で作れるわけないじゃないですか」
相馬が部長に歯向かうのを、間に挟まれた私は、はらはらしながら見ていた。
こんなことはじめてだ。
どうしよう。
「あの日、大変だったんすよ。台風で電車止まってて、霧野、すげぇ帰るの苦労したんすから」
な、と相馬が、私を見て、私は押されて頷く。
正確には帰るのに苦労した、じゃなくて、帰れなかった、だけれど。
相馬の顔は相変わらず疲れていて、クマのできた目元はむしろいつもより圧が強いように見えた。