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第14章 予定外



 咄嗟に視線が泳いだ。

金曜日は夕方の五時から始めて、十一時ぐらいまでは掛かったはずだ。
今回はベースはあるとしても、相馬がやってくれた仕事をまるまるやり直すようなものだから――別の仕事も、今日やる予定だったのが残ってるし――。



「まあ定時には終わんねえな」

 相馬が呟く。

「頼んだぞ」

 部長が私に念を押す。



「……はい」

 そうとしか答えられない空気だった。
部長はぷりぷりしながら部屋を出ていった。

部屋は静まり返っていて、キーボード音のひとつもしていなかった。
みんなが私たちの会話を聞いていたのは瞭然だった。



どうしよう。
フロアの空気が悪くなっちゃった。
私のせいだ。この空気を何とかしなきゃ。
どうすればいいかわからない。
私のせいなのに――、



「霧野」

 相馬が、無音の世界に声を落とした。


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