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unbalance
第15章 退勤
「俺……そこまで考えてなくて」
その相馬のやつれた顔に、しまった、と思った。
私、あの日から相馬を傷つけて、傷つけ続けて、今もまだ――
「ごめん、考え直す。とりあえず人事には行かないから」
相馬はお疲れとひとことだけ残して、足早に出て行った。
私は相馬の背中をただ棒立ちで見送ってしまった。
どうすればいいかわからなかった。
こんなとき相馬なら、きっと上手に伝えたいことを伝えるんだろう。
私は、私は――、
言わなければいけないことを、言えていない。
震える手に焦りながら私は身支度を整えて、電気を消して会社を出た。
まだ間に合うかもしれない。
会社からいつもとは反対方向、相馬の家の方角に向かって駆け出した。