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第19章 軽口



 どう答えよう。
迷っていると、相馬が質問を重ねた。



「霧野って、もしかしてマゾヒスト?」



「ちっ、ちが……っ」

 相馬が目を閉じたまま、声を出して笑った。なんだ、冗談か。

「じゃあ何で?」

 痛いのは嫌。でも、相馬のことは――。



 もちろんそこまで言う気はない。
でも、だったらどう言えば納得してもらえるだろう。

メイクはこのあたりでいいか、と私は目を伏せて、チークを閉じた。
私の手の甲がパレットになるのと引き換えに、相馬は幾分か健康に見える顔になった。



 私が切り返しかたを考えていると、相馬の唇がまた至近距離で動いた。

「キスしてくれたら、嫌じゃないって信じてやってもいいよ」



 なに……それ。


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