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unbalance
第20章 駐車場
「私、仕事に戻るんだから、長くは話せないよ」
「まだ残業すんの?」
「今週中で頼まれた資料があるのよ」
相馬が私をちらりと見て、ふーんと気のない相槌を打ちながら缶コーヒーを開ける。
――興味ないなら聞かないでよね。
私も缶を開けると、かしゅ、と小気味いい音が響いた。
相馬が口をつけるのに倣って、私も一口いただく。
別に特段おいしいというわけでもないけれど、いつもの味。すっきりした苦味。
「さっきはごめん。無理やり、キスとか」
いきなり直接的な言葉が出てきて、咽そうになる。
周りに人がいないことを確認したうえで私は声を潜めて答える。
「あれ、は、私からしたんじゃ」
「しろって言ったのは俺だった」
確かに、そうだけれど。
「でもさ」
相馬が話を切り替えた。
「簡単にキスとかするの、どうかと思うぜ」
……何、それ。
しろって言ったのは相馬じゃない。