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unbalance
第20章 駐車場
そういうことをしたことが、仲の良さの指標になるかはともかく――あの日帰れなくなった私を、相馬が泊めてくれて助かったのは確かだった。
泊めてもらったこと自体は、今となってはよかったのかどうか何とも言えないけれど……でも、少なくとも相馬が、私のためを思ってくれたのは、確か。
……いや、こんなことをうだうだ考えなくたって、結論は決まっているのだ。
私も別に相馬とどうこうなろうってわけじゃないし、もう今後一切こういうのはやめようと思っていた。
何なら、相馬からセフレにならないかと持ち掛けられても頑として拒否する心構えまで作ってきたつもりだった。
相馬の言葉に、そうですねわかりましたで、今日の会話は終わったはずだった。
私はいったい、何を渋っているんだか、
「霧野」
相馬がぐっと缶を煽って、自販機の横のゴミ箱に捨てた。
小さい缶だ。すぐに飲み終わってしまう。
私の缶にはまだ少し中身が残っているけれど――
「えっ」
いきなり相馬にバランスを崩されて、その缶をしっかり握っていることに気を取られているうちに、いつの間にか私は、相馬の腕の中に匿われていた。
相馬の白いシャツの肩口に頬をつけて、相馬に腰と後頭部を引き寄せられる。
相馬の体温が、ダイレクトに伝わる。
宙に浮いた腕が、不格好に缶の姿勢だけ保っている。幸い、中身はもうわずかで、こぼれたりはしなかった。
相馬の低い声が、耳元で響く。
「……抵抗しろよ」