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第25章 台詞



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「……なんで、そうなるの」

「悪い話じゃないと思うんだけど。拒否る理由もないだろ」



 動揺した顔を見せたくなくて、でも相馬がどんな顔でそれを言っているのか気になって、肩越しにこっそり相馬を窺うも、相馬は腕で鼻をこすっていて表情は見えなかった。



「……拒否る理由ならあるでしょ。おかしいじゃん、……好きでもないのに」

「……それは」



 相馬は否定しない。
自分で言ったくせに悲しくなる。
今日はぜったいに泣けないのに。
ああ、早く帰りたい。



「でも、セフレよりマシじゃない? セフレってことにしても、どうせどっちかに恋人できたら解消するだろ。だったら付き合っても大差ないじゃん」



 私は相馬から視線を外して、ドアノブを見つめる。
大きく息を吸う。

落ち着け。大丈夫。泣く必要はない。
こんな、私の気持ちにちっとも気を遣えない馬鹿に、泣かされる必要はない。



「霧野は、今好きな人がいるとかでもないんだろ。それとも……他にもたくさんセフレがいるとか?」

「そっ……そんなわけないじゃんっ」



 相馬の口調に冗談めいた色が滲んで思わず後ろを振り返ると、ばっちり彼と目が合った。



 ……どうして、そんなに困ったような表情をしているの。


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