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第26章 コンシーラー



 いや、それだけは事実かもしれなかった。
私がちょうど自分の心の醜さに落胆しているころだった。
相馬からの社内チャットの通知が来た。



『今夜俺が手伝うことになってる資料、誰からどんな依頼か、簡単でいいからリストとかもらえる?』

 口頭で聞けよ! すぐそこにいるんだから! 

と内心突っ込みながら部屋を見渡すも、相馬はいなかった。他部署にでも行ったのか。



 もしくは、避けられている、か。



 今夜残業を手伝ってもらう約束になっていたことを、言われてはじめて思い出した。
手伝ってもらうつもりはなかった。
残業すると言っても、もともと九時には帰れるつもりで予定を組んでいたのだ。
一日早く帰ったぐらい、今日十一時まで粘れば巻き返せる。私一人で充分だ。



 けれど、チャットで手伝う手伝わないの押し問答をするのは面倒すぎる。
まあいいか、今日の夜に、相馬が戻ってきたら追い帰せば。
この場は素直に収めよう。


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