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第26章 コンシーラー



「……どうして」



 それは確かに――ほっとはする。
けれど、ほっとするのは今だけで、結局来週の仕事が増えるだけなのは、経験上わかっている。
次から次へと仕事が来る場合、後ろに倒せばいいというものではない。



「で、来週で頼まれてる分はとりあえず三人分、ベース案と想定してるデータをもらえるようにお願いしといた。週明けに来るはず」

 ――なにそれ、

「その通りにならないかもってことも言ってはあるから、気に入らなかったら霧野の好きに作ったらいいよ。言い訳と調整はこっちでするから」



 机の上に広げられた、いつも相馬が使っている手帳は、殴り書きばかりで読めたものではないけれど、ところどころ判別できる文字を辿っていくと、私のリストにあった名前に、電話を掛けたのだろう跡が見て取れた。

相馬から説明を受けながら、必要な情報をピックアップして自分の手帳に書き写す。
書き写しながらぞっとする。

年齢も社歴も一回り上の人ですら、当たり前のように締め切り順に――つまり私の渡したリストの上から順に――出てくるのだから。

気軽にチャットで済ませられないような人もいる。



外回りの間を縫って――きっと、電話が繋がらなくて何度も掛け直したり、運転中に折り返しが来て、慌てて近くのコンビニに入ったり。
それが、十人には及ぶ。


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