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第4章 視線



 それ以上特に言うこともなくなった俺が洗面所を出ると、ドアを閉める音を合図に、またシャワーが鳴り出した。



 ……さて。

 濡れた廊下も鞄も拭いてしまった。
部屋着に着替えて濡れた服はまとめて、霧野が出たらすぐ風呂に入る準備も整っている。
コンビニで買った飯はローテーブルに並べたし、酒は冷蔵庫の中で冷やし直している。
なんと、レジ袋まで畳んでしまった。



 やることがないと、二枚も三枚もドアを隔てたシャワーの音ばかり気になってしまって、要らぬことばかり想像してしまって――正直、ムラムラする。

 いったい霧野は、何を考えてうちまでついてきたんだか。



 非常事態だから仕方がない? 
そりゃ現実問題、他に選択肢はなかったし、俺だって変なことするつもりで連れてきたわけじゃないけれど。それにしたってもうちょっと警戒というものを――、



 ――相馬が私のこと女だと思ってないのは知ってるしね!



「なんだよ、それ」

 どこ情報だよ。いつどこの誰情報だよ!



 怒りなのかなんなのかもわからない感情を処理するすべがなくて、俺は二度目の舌打ちをした。

 だめだ、何か気を紛らわしていないと。



 俺はイヤホンをはめ、昨夜の読みかけの本を取ってベッドに寝転がった。


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