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第26章 コンシーラー



 相馬が声を潜めて並べた名前は、確かに大手企業の社長とか、業界のボトルネックとなるような人たちで、普通だったらなかなか一緒に飲むなんてできない人たちだった。

「今、調整しますって言って待ってもらってる」



 すごいよ、素直に。



 相馬は、こういう人なんだ。
お偉いさんに目をかけてもらえて、誘われて、そして喜んで参加して、気に入られて帰ってくるんだ。
しかも、頼めば返事を待ってすらもらえるという折り紙つき。



「いいじゃん、行きなよ」

「……ごめん、先約なのに。明日ぜったい手伝うから」



 いいよ、別に。相馬には、机に向かってちまちま資料を作るなんて似合わない。



「相馬、もしかして、そういうサビ残含めたら割と残業してる?」

「残業扱いにできるときもあるよ。できなくても、まあ好きで行ってるだけだし」



 私だったら隙あらば断るのに。その前に、誘われもしないけれど。

 相馬らしくて、そういうところ、――憎めないのだ。

 憎めないどころか、むしろ、そういうところが。


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