この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第26章 コンシーラー
相馬が声を潜めて並べた名前は、確かに大手企業の社長とか、業界のボトルネックとなるような人たちで、普通だったらなかなか一緒に飲むなんてできない人たちだった。
「今、調整しますって言って待ってもらってる」
すごいよ、素直に。
相馬は、こういう人なんだ。
お偉いさんに目をかけてもらえて、誘われて、そして喜んで参加して、気に入られて帰ってくるんだ。
しかも、頼めば返事を待ってすらもらえるという折り紙つき。
「いいじゃん、行きなよ」
「……ごめん、先約なのに。明日ぜったい手伝うから」
いいよ、別に。相馬には、机に向かってちまちま資料を作るなんて似合わない。
「相馬、もしかして、そういうサビ残含めたら割と残業してる?」
「残業扱いにできるときもあるよ。できなくても、まあ好きで行ってるだけだし」
私だったら隙あらば断るのに。その前に、誘われもしないけれど。
相馬らしくて、そういうところ、――憎めないのだ。
憎めないどころか、むしろ、そういうところが。