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第26章 コンシーラー



「……相馬」

 今日はじめて、真正面から相馬の顔を見た。
今朝も挨拶だけはしたけれど、一瞬だったし、きっと真っ直ぐ顔を見ていなかったのだと思う。

「今日、もしかしてコンシーラーしてる?」

 クマが薄くなっていると思った目元。
じっとしている相馬をこの距離で見たからわかった。
少し、コンシーラーがよれている。



 相馬は、バツが悪そうに笑った。

「バレた? やっぱ、わかるかな?」

「いや、今まで気づかなかった」



 それは、汗をかく前で崩れていなかったからか、私が相馬をちゃんと見ていなかったから、わからないけれど。



「買ったの?」

「昨日の帰り、化粧落とし買おうと思ってコンビニに寄ったらあったんだ。男性用クマ隠しって」

「へえ、最近はそんなのもあるんだね」



 私は相馬を待たせて、小走りで自席からポーチを取ってきた。
相馬は大人しく、よれた部分を直させてくれた。
別に、見られてまずいことをしているわけではない、けれど、誰も通りかからなかったのはやっぱりラッキーだった。



 相馬のクマが、実は昨日からそんなに改善していないことで溜飲が下がるなんて……つくづく、私は性格が悪い。



「もういいよ」

 相馬が目をそっと開ける。


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