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第26章 コンシーラー



「明日は、一応四時ぐらいには最後の予定が終わって、四時半には戻ってこられると思うから」

「ううん、いい」

 相馬は怪訝な顔をした。

「これで充分だよ」



 私は、書き写したばかりの自分のメモ帳を手でおさえる。

「あとは私一人でできる。手伝ってくれてありがとう」



「でも、約束だろ」

「約束は果たしてくれたよ。私の仕事は減ったもん」



 来週、相馬が連絡してくれた各所からどんなベース案が来るかはわからないけれど――
依頼者が何を欲しがっているのかを探るためにあれこれ考える時間はぐっと減るはずだ。
言われてみれば今まで、どうしてそんなところに時間を掛けていたんだろう。
素直に聞けばよかったんだ。

 私に、素直に聞いて答えてもらえるような人間関係を作る能力はないかもしれないけれど……でも、だとしたら私が伸ばすべき力の方向性はそこだ。
あとは、私の努力次第。



 久々に明るい展望が見えて、ちょっと心が軽くなっていた、のだけれど、

「遠慮してる?」

 相馬は納得していないらしかった。


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