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第26章 コンシーラー



「いや、遠慮じゃなくて。相馬に手伝ってもらう前に自分でできることがあるなって」

「霧野はもう充分頑張ってるよ」

 相馬は言ってから、いや、違うな、と首を傾げた。

「霧野にまだできることがあるのはそうだとしても、それでも頼っていいんだよ」



 それは……そうなんだろうか。
いや、人に頼るなんて自分ではどうしようもなくなったときの最終手段で、
――いや、違うんだ、きっと、相馬にとっては。



「俺……正直言うと、霧野も、好きでやってるんだと思ってたんだよね」

「何を?」

「資料作り。別に早く帰ろうと思えばできるけど、好きでやってるんだと思って」

「悪うございました、仕事が遅くて」

「違ぇよ。こんな大変な思いしてるなんて知らなかったって話」



 それは――、

「……ごめん、気ぃ遣わせた」



 思わず視線を彷徨わせる。余計なことを言ってしまったから。

 あの、台風の夜。
社内の人にはぜったいに言わないことにしていた愚痴を、相馬に。


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