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unbalance
第26章 コンシーラー

「謝るなよ。俺は知れてよかったよ。手伝えることは手伝いたいし」
部長に歯向かう、とかね、と相馬が笑う。
資料の修正指示をしに来た部長に、相馬にしては珍しいほどあからさまに噛み付く背中は記憶に新しい。
「ありがと……」
そのときだけじゃない。
月曜日はそのあと資料の修正を手伝ってくれたし、そもそも発端となったのだって、
「まあ、先週の金曜日は、ね。普通に霧野帰れなさそうって思っただけだけど」
「ご心配をお掛けしまして……」
「霧野が帰れなかったらお持ち帰りしようと思っただけだけど」
「なっ……」
またそんな冗談を。
「でも、現実問題、帰れなかっただろ?」
「それ、は、そうだけど……」
「お礼はキスでいいよ」
――キス、という言葉で、その感触を、リアルに思い出してしまって、
顔が熱くなる。

