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unbalance
第28章 先約
「はあ……。また何かありました?」
また作り直しか、とげんなりしながら答える。
っていうか、私あの資料、部長にメールで送ってから返信もフィードバックもないんですが?
あのあとどうなったんですか?
先方に送っといたよ、の報告ぐらいあってもよくないですか?
「先方がいたく気に入ってな。今夜食事するんだが、資料の作成者を呼んでほしいとのことだ」
え、それって……、
「五時過ぎに会社を出る。行けるな?」
い……やいやいや。
助けを求めて隣の相馬を見ると、彼はにっこり笑って、
「よかったじゃん。行ってきなよ」
え……止めてくれないの……?
なんて、もっと言えるわけがなかった。
相馬だって、俺との先約があるんで、なんて言えるわけがないだろう。
そして私は、約束の相手が行っていいと言っているのだ。
仕事を拒否する理由は、もう見つからなかった。