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第28章 先約



「……わかりました」

 私はしぶしぶ頷いて、満足そうに去っていく部長の背中を見送った。



 ――面倒くさいな……。



 営業らしからぬ感想だけれど、それが私という人間の正直な心だった。

 もちろん、私が作った資料が評価されたのは嬉しい。
けれど、だったらむしろボーナスとして、早く帰らせてくれればいいのに。

知らない人と喋るのは得意じゃない。
それが世代の合わないおじさんたちで、取り引き先で、失礼のないように気を遣わないといけないとなればなおさら。



 とりあえず、背後に人がいないことを確認して、相馬にチャットを送る。
隣の席だけれど、あんまり人前で話したくはない。



『ごめん、今日だめになった』

 返事はすぐに来た。

『うん、聞いてた笑』

 うん、知ってた。



『まあ、返事を聞くのは日を改めるよ』

 返事って何の、とパソコンに打ち込む数秒の間で気づく。



告白の、返事。

相馬は――そういうつもりでいるんだ。



 本当に、本気、なんだ。


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